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鏑木清方と鰭崎英朋展@太田記念美術館

鏑木清方と鰭崎英朋展@太田記念美術館
By Yasukuni Notomi • Issue #70 • View online
 2021年5月21日〜6月20日の日程で太田記念美術館で開催されている「鏑木清方と鰭崎英朋」展は、実は、2020年2月に開催されながら、コロナ禍の中、10日もせずに中止となった展示の復活開催です。とても良い展示だったので、当時書いた感想をここにも載せておきます。小説の口絵を中心として活躍し、それ故に日本美術史から黙殺された才能がどれほど凄かったのかが、清方より圧倒的に上手い英朋という画家の面白さや、日本画家になる前の清方の良い仕事、同時代の口絵絵師達の作品から、じわじわと伝わる、とても良い展示でした。

 「鏑木清方と鰭崎英朋」展@太田記念美術館。明治から大正にかけて大流行した、文芸誌の木版口絵で双璧と呼ばれた清方と英朋を軸に、木版口絵で活躍した絵師の作品を集めた、異色の展覧会だけど、これがまた面白かった。鏑木清方と鰭崎英朋では現在の知名度に開きがあり過ぎるけど、それは結局、後に日本画に専念した清方と口絵の世界で生きた英朋という違いに過ぎなくて、美術の世界で口絵は評価対象じゃなかったから英朋は忘れられたというだけの、ホント近代以降の日本のダメさの弊害がこんなとこにも案件。見れば分かるけど、絵が上手いのは圧倒的に英朋だもん。更にその上を行くのが清方の師匠の水野年方で、更に言えば去年の暮れの太田記念美術館でやってた「ラストウキヨエ」展のポスターで印象的な天女の絵を描いたのが英朋の師匠の右田年英。どっちも師匠は超えられないのだったw 
鰭崎英朋「香汗淋漓」(『新婦人』明治44年9月号口絵)
鰭崎英朋「香汗淋漓」(『新婦人』明治44年9月号口絵)
 で、両師匠はどっちも芳年の弟子で、その流れで言えば、絵にドラマを持ち込む系譜であって、文芸誌の口絵を描くというのはもっともな流れ。そこで面白いのは、年方が発見した、静的なドラマを画面構成と女性のポーズで見せるスタイルに、わかりやすい表情表現とやや過剰な演出で浮世絵らしさから脱却した清方と、浮世絵のフォーマットの中で、エロをドラマとして描くスタイルを身につけた英朋という対照が面白いのだ。そして両者共に、線については師匠を飛び越えて芳年の影響が物凄く強い。この時代、浮世絵との距離の取り方が、そのままスタイルに繋がってるのだと思う。
 で、両師匠はどっちも芳年の弟子で、その流れで言えば、絵にドラマを持ち込む系譜であって、文芸誌の口絵を描くというのはもっともな流れ。そこで面白いのは、年方が発見した、静的なドラマを画面構成と女性のポーズで見せるスタイルに、わかりやすい表情表現とやや過剰な演出で浮世絵らしさから脱却した清方と、浮世絵のフォーマットの中で、エロをドラマとして描くスタイルを身につけた英朋という対照が面白いのだ。そして両者共に、線については師匠を飛び越えて芳年の影響が物凄く強い。この時代、浮世絵との距離の取り方が、そのままスタイルに繋がってるのだと思う。
 で、そういう双璧に加えて、もう一人、師匠無しの武内桂舟という人がいて、口絵の仕事量で言えば双璧を上回る、つまり出版社的には最も売れっ子だったようなのだが、この人の絵は、とても口絵らしいというか、構図も表情も説明的で分かりやすく、しかも情緒に溢れている。この感じは浮世絵が苦手とする、しかし明治中盤から昭和にかけて、とても人気のあるスタイル。後期浮世絵で言えば、やっぱり師匠無しで出てきて物凄く売れた尾形月耕で、俺的にはムード派とでも呼びたい流れ。でも口絵という浮世絵より更にメディア性が強くて、流行に左右されやすい媒体では、この流れを無視できないだろうし、そこに、これだけ上手い人がいたら、そりゃ発注するわ、と思う。
富岡永洗「黒岩涙香・訳『人の運』前編口絵」
富岡永洗「黒岩涙香・訳『人の運』前編口絵」
 面白かったのは、明治の歌麿と呼ばれたらしい富岡永洗の、女性のエロい部分を強調することなく、色気をきちんと描くためのアイディアの豊富さと、それを実現できる技術。こういう方法は浮世絵の流れからは生まれにくい。西洋の挿絵やポスターを沢山見たのではないかと思う。ある意味、グラビア的なものの先駆けなのだろう。早逝が惜しまれる。というか水野年方と富岡永洗が長生きして大正まで絵を描いてたら、美人画はずーっと続いたんじゃないか。
 あと、明治になって木版の技術が廃れたのではなく、上手い職人は、よりギャラが良い雑誌の世界に行っただけなんだなあということがしみじみ分かる展覧会でもあった。そして浮世絵が安易にドギツイ赤と安っぽい緑に走る中、ちゃんとした職人と絵師は、ハーフトーンの茶色を発見してることも分かった。近代美人画はもしかしたら茶色の発見なのかもしれない。一方で、女性の顔は徐々に俯くように描かれて、鼻の穴が描かれなくなっていく。流行を映す雑誌メディアだから、その変化は顕著だったり。
 今回の展示は朝日智雄という方の個人コレクションで、この方、前にクラウドファンディングで明治大正の挿絵口絵コレクションのデータベースDVD作るための資金募集してた人。もちろん俺は支援したので、そのDVD持ってるのだった。下記リンクから購入できるので、買うといいと思う。
朝日コレクション 明治・大正口絵作品集 –
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Yasukuni Notomi

AllAbout、日経トレンディ、朝日新聞、夕刊フジなどに連載中。オウンドメディア、片岡義男.com、その他諸々、あちこちで書いています。マツコの知らない世界、嵐にしやがれ、モニタリング他、テレビやラジオ出演も色々。そこからはみ出したネタや、愛用品、目立たないけど凄い新製品、うまいコーヒーやお茶や酒、浮世絵や歌舞伎や芝居、音楽、ミステリにホラーにSFなどなど、面白いものを随時、紹介しますので、読んでもらえると話のネタ、記事のネタになるかも。メールアドレスを登録すると、最新記事がHTMLメールで届くので、ちょっと面白いです。

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