小物王通信

By Yasukuni Notomi

超歌舞伎「御伽草子戀姿絵」を見たよ!

#65・
77

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超歌舞伎「御伽草子戀姿絵」を見たよ!
By Yasukuni Notomi • Issue #65 • View online
超歌舞伎2021年の新作は「御伽草子戀姿絵」。頼光と七綾太夫の恋に、平井保昌、袴垂保輔の兄弟が絡み、それを茨木童子と土蜘蛛伝説でまとめる趣向。基本の筋は近松の「関八州繋馬」で、猿之助の「御贔屓繋馬」や「金幣猿島郡」ほどのぶっ飛んだ話ではないけど、歌舞伎の歌舞伎らしい演出をバラエティショーのように見せるスタイルは見事な歌舞伎入門になっていました。十分、面白かったけれど、超歌舞伎の限界や課題も見えた芝居で、そのへんの印象を書いてみました。あ、大事なこと書き忘れていたので、追記しました。

今回の超歌舞伎は、近松門左衛門の「関八州繋馬」をベースに、桜田治助の「我背子恋の相槌」、山東京伝の読本「善知鳥安方忠義伝」などを加えた新作で、獅童の頼光、袴垂保輔二役でミクの七綾太夫実は七綾姫と土蜘蛛の精だという話を聞いた時点で、まあ歌舞伎好きなら大体の筋の予想が付くし、実際、予想通りの話ではあったのだけど、予想以上にガッツリと普通に歌舞伎をやっていて、物語も歌舞伎的な筋立てから逸脱せず、これまでの超歌舞伎の上演で、客に対する「歌舞伎」の面白さの啓蒙はほぼ出来たという前提で作ったんだなあと思った。それはとても観客を信じているということだし、作り手の姿勢として正しいというか、ホント歌舞伎が大好きなスタッフでやってるなあと思って嬉しくなってしまう。
一方で、それは初音ミクが出ているという点以外では普通の歌舞伎であるということだし、実際、今回、物語的にも演出的にも、古典をなぞるスタイルに徹していて、超歌舞伎らしさはコメントに集約されるという形になっていた。それは「歌舞伎」をやるのであるという主張でもあってカッコいいのだけど、なんでも内包してしまう歌舞伎というものすごい懐の大きなスタイルに対して、超歌舞伎が屈伏しているように見えなくもなくて、見ていてむず痒い感じはずっと最後まで続いた。
ミクが滝夜叉姫ではなく七綾姫だというのは「恋物語」を強調したかったからだろうし、妖怪サイドは茨木に集約させて、太郎良門を出さなかったのも、将門の物語になり過ぎるのを避けたからだろうなとか、将門の遺児vs四天王の芝居は、大体が複雑で面倒くさい筋立てなのを、そのエッセンスだけをシンプルに見せようと苦心したんだろうなとか、色々、分からないでは無いのだけど、スクリーンで一気に物語を説明できるのが超歌舞伎の良さだし、いっそ、御贔屓繋馬とか四天王楓江戸粧とか金幣猿島郡くらいぶっ飛んだ話をベースにしても良かったんじゃないかなという気もした。猿之助歌舞伎的になることを避けたのかもしれないけど、中村獅童は猿之助歌舞伎を支えた歌六・歌昇兄弟の直系だし、リスペクトも含めて、頂いちゃっても良かったのではとも思うのだ。
または、もう面倒くさい「もどり」とかやらずに、主筋を「忍夜恋曲者」にして、そこに国芳の相馬の古御所のイメージとか土蜘蛛とかを突っ込んだりするとか、ミクを活かすやり方は色々あったような気もするのだ。超歌舞伎はその構造上、屋台崩しは出来ないし、巨大土蜘蛛をばーんと作り物で出すのも難しいけど、ガシャドクロとか、沢山の蜘蛛とかを出すのは得意なはず。その辺まで歌舞伎っぽさにこだわってやらなくても良かったんじゃないかなあと思った。
面白かったのは、3Dのミクとスクリーンのミクの使い分けが、なんとも歌舞伎の演出に溶け込んでいて、両方の良さが活きていたこと。藤間勘十郎の振付が抜群に良かったこともあって、ミクの舞踊は全部良かった。歌舞伎のフォーマットでミクの魅力を見せるという意味では大成功だったのではないかと思う。群舞も良かったし、今回、勘十郎大活躍だな。彼の母の紅葉狩の鬼女は、私が見た全ての舞踊の中で頂点だと思っているのだけど、そういう部分が継承されてる気がして嬉しかった。あと、ミクの台詞回しの語尾がちょっと上がるのは良かったなあ。
やっぱり素直にミクを滝夜叉姫にして妖術使いにして、その上で頼光との恋物語にするという方向での芝居が見たかったと思う。阿修羅城の瞳みたいな。あ、それで思い出したけど、後半の殺陣とか踊りは、かなり新感線っぽかった。いっそ髑髏城の七人のスピンオフを超歌舞伎でやったらいいのにとか思ったりもした。
ともあれ今回も良いものを見せてもらいました。こういうのをやってくれるだけでも芝居好きとしてはとても嬉しいのだ。ちょっと横澤さんがまともに歌舞伎が大好きになり過ぎちゃってる気もするけど、それも悪いことではないはず。まあ、蜘蛛がテレビドラマ版の「IT」くらい拍子抜けの小ささだったのだけは残念だったけどw 出来れば大蜘蛛に乗って暴れるミクが見たかったなー。
追記
 一番大事なこと、書き忘れてた。大薩摩をCGキャラでやったのが、何といっても最高だったのだ。しかも、三味線はしっかり足台に足を乗せてるし速弾きするし、歌う方は、紙の代わりにメガホン持ってるのだ。そして詞はスクリーンに出す。これだよ、これが超歌舞伎なのだ。この場面は、ちょっと震えちゃった。欲を言えば、歌い終わったら、舞台袖に歩いていって欲しかったけど、ふっと消えていくのも悪くない。
会場には行けなかったので、千秋楽のライブ中継をプロジェクターで大画面で見ました。
会場には行けなかったので、千秋楽のライブ中継をプロジェクターで大画面で見ました。
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Yasukuni Notomi

AllAbout、日経トレンディ、朝日新聞、夕刊フジなどに連載中。オウンドメディア、片岡義男.com、その他諸々、あちこちで書いています。マツコの知らない世界、嵐にしやがれ、モニタリング他、テレビやラジオ出演も色々。そこからはみ出したネタや、愛用品、目立たないけど凄い新製品、うまいコーヒーやお茶や酒、浮世絵や歌舞伎や芝居、音楽、ミステリにホラーにSFなどなど、面白いものを随時、紹介しますので、読んでもらえると話のネタ、記事のネタになるかも。メールアドレスを登録すると、最新記事がHTMLメールで届くので、ちょっと面白いです。

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