小物王通信

By Yasukuni Notomi

青崎有吾「アンデッドガール・マーダーファルス3」ちょっとネタバレあり

#64・
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青崎有吾「アンデッドガール・マーダーファルス3」ちょっとネタバレあり
By Yasukuni Notomi • Issue #64 • View online
 待ちに待った「アンデッドガール・マーダーファルス」の3冊目、第五章「人狼」が刊行されました。2巻の「怪盗と探偵」でルパンとホームズと保険屋、「夜宴」で怪物団の面々が登場して、いよいよ登場人物(?)が揃ったところで、本格的に物語が動き出した3巻ですから、そりゃ期待もするというものです。そして、期待を大きく越える傑作だったので、おおーっ、と盛り上がって感想を書いてしまいました。

青崎有吾「アンデッドガール・マーダーファルス3」
青崎有吾「アンデッドガール・マーダーファルス3」
 青崎有吾「アンデッドガール・マーダーファルス3」読んだ。ビクトリア朝のヨーロッパを舞台にした、化物たちによる本格ミステリで本格バトル小説。このシリーズ、ホント面白い。首だけになった不死の名探偵と、見世物小屋の芸人上がりの鬼と、戦うメイドのチームが、化物撲滅を目論む保険会社とか、ホームズとワトソンとか、ルパンとオペラ座の怪人とか、モリアーティ率いる、吸血鬼と魔術師と人造人間と切り裂きジャックとかのチーム夜宴とかと、やり合ったり連携したりしつつ、怪物による事件をきちんと青崎有吾らしいロジックで解決していくというプロットだけでも燃えるではないか。
 で、1巻が吸血鬼の一家に起こる殺人事件と人造人間製造にまつわる密室殺人、2巻がホームズvsルパンによるダイヤの争奪戦に、怪物専門探偵が文字通り首を突っ込み(生首だからね、主人公)、そこに保険屋と怪物チームがなだれ込む事件の顛末が書かれて、3巻は人狼探しと、人狼の村と人間の村の対立と両方で起こる連続殺人事件を巡る、人間、怪物入り乱れての例によってのドタバタと謎解き。多分、この3巻は、人狼の事件だからなのか、二階堂黎人の大傑作「人狼城の恐怖」へのオマージュになっているような気がするというか、多分なってる。遠くて近い二つの場所で似たような連続殺人事件が起こるという設定が同じなのは、明らかに意識したものだと思う。そして、それがとても上手くいってるから、人狼城、読み返したくなってしまった。あの長大な話をw
 今回、2巻と3巻の間が空いたので、せっかくだしと1巻から通して読み返したのだけど、これ、山田風太郎の明治物と忍法帖物を合体させたような話で、そこに本格ミステリを突っ込むという、相当ハイレベルなことやってるのがハッキリ分かった。凄いことやってるなあ。一方で、まだ本になってないけど、阿佐田哲也を学園物でやるみたいなシリーズも書いてるし、本格ミステリの若きエースみたいな位置にいるのに、変なこともどんどんやる、青崎有吾の物語る欲望は、そのリーダビリティの高さや、エンターテイメント性の高さの裏に貼り付いているような切なさも含め、栗本薫や山田正紀のような、ジャンルを超えた物語作家としての資質を思わせる。
 特殊設定ミステリとしても化物小説としてもバトル小説としても、高いレベルで読めて、しかもラノベ的なテイストもたっぷりで、エロくてグロくて、きっちりロジカルで、その上で、ふざけていて、何故かいつも落語がネタに被ってきて、読み味は軽いから、幅広い年齢層に向くという、いやこれ、全国の小中学校の図書館に置いて欲しいなあ。こういう不健全で抜群に面白い小説は、子供の頃に読んどくと、エンターテイメントへのリテラシーがグンと向上すると思うのよ。いや、オッサンも読んだ方がいいと思うけどw
 コミックス版はあるんだし、アニメ化もしないかなあ。喋る鴉夜、動く静句が見たいなあ。ホームズvsルパンが、ガッツリ見られる、その原作愛も含め、アニメ向きだと思うんだけどなあ。まあ、青崎有吾だから謎解きが丁寧すぎて長いというのはあるけど、今なら、その辺もガッツリやっても視聴者はついてくると思うのよ。いっそ、Netflixでヨーロッパで実写やらないかな。これと、メアリ・ジキルのシリーズは、FGO人気の今なら受けると思うよー。
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Yasukuni Notomi

AllAbout、日経トレンディ、朝日新聞、夕刊フジなどに連載中。オウンドメディア、片岡義男.com、その他諸々、あちこちで書いています。マツコの知らない世界、嵐にしやがれ、モニタリング他、テレビやラジオ出演も色々。そこからはみ出したネタや、愛用品、目立たないけど凄い新製品、うまいコーヒーやお茶や酒、浮世絵や歌舞伎や芝居、音楽、ミステリにホラーにSFなどなど、面白いものを随時、紹介しますので、読んでもらえると話のネタ、記事のネタになるかも。メールアドレスを登録すると、最新記事がHTMLメールで届くので、ちょっと面白いです。

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