Google が内定者に対して、競合企業のほうが条件が良い場合はオファーレターを提示して示してもらうなど施策をとっているとのことです。Google としては単に条件交渉として使うだけでなく、他社がどんな人をどのような条件で採用しようとしているのかを把握し、Google の採用競争力をより高められると The Information が報じています(The Infomation の記事全文は有料です)。
日本でもエンジニア採用は難しいと言われ続けはや何年といった感じですが、本場米国でも過熱しているようです。具体的には給与はあがり続けており、またパンデミックの影響で求職者の価値観が変わったという影響が大きいようです。例えばオフィスよりも家庭環境や家族との過ごし方を重視するように変わった、などなど。
こうした変化は驚くようなことでもなく、アメリカだけの現象ではない、というか日本でも起きていると思います。
ミクロに、あるいはマクロにもソフトウェアエンジニアという職業の給料が上がることや人気が高まることは、基本的には良いことだと思っています。ミクロには間接的に自分の給料も上がりやすくなるという自分本位な話もありますし、マクロにはソフトウェアエンジニアという仕事の人気が高まることでより秀でた才能がこの業界に来る可能性が高まるわけで業界としては良いことづくしでしょう。
この競争が続いていることもそれなりの理由があって、直近ではパンデミックで世界中が Stay Home を強いられた影響も当然あります。家にいながらしてコンテンツを消費するためにはたいていインターネットを介すわけで、テック企業が成長するのは当然のなりゆきです。
日本的に言えばデジタルへの変革(DX)が待ったなしの急務ですし、BtoB の SaaS 業界なんかも盛り上がっています(ポジショントークです)。
とはいえ、採用に関わる人間としてはこの激しい競争はいつまで続くんだ、という気持ちになることがあります。やれやれ。
SaaS 業界という労働集約型産業
ところで、一般論として BtoB の SaaS というのは究極的にはあらゆる会社の業務を肩代わりするためのプロダクトだし、そうあるべきだと思っています。
しかし、BtoB の SaaS プロバイダーの業務って実は労働集約型でもあって、誰かの業務を肩代わりするための業務を結局人が担っています(ここでいう「人」はセールス、カスタマーサクセス・サポートやプロダクト開発をするエンジニアなど多岐にわたる)。業務をプロダクトが肩代わりしているように見えて、結局プロバイダーが肩代わりしている、つまり単価の安い外注でしかないんじゃないかと感じることがままあります。
セールスのプロセスにもプロダクト開発にも結局人手がたくさん必要です。公開されている採用目標とかを見ると組織を 1.5 倍にするとか 2 倍にするとか、そういう数字が躍っています。
しかし、本来であれば人が少なくてもプロダクト開発が順調である方が良いに決まっているので、それができないということは物理的に業務を肩代わりするにはそれなりの人間の数が必要だということなんでしょう。そういう肌感覚もあります。
だけどなんだか腑に落ちません。テクノロジーで業務にかかる負担を減らそうとしているのに、プロバイダーがそれを人の数を増やして引き受けてしまっては、どこか本末転倒な気がします。
僕が夢を見すぎで、もしかしたら単価の安い外注を実現したことこそが、SaaS がもたらした革命なのかもしれません。